上槽

今年もこの日がやってきました。

1月27日に留添を終え
タンクの中で徐々に変化してきた醪も
いよいよお酒になります。

上槽(お酒を搾ること)を迎え
自分の手で育てた酒米が
酒になる日は
毎年格別な思いがあります。

2月24日
アルコール度 17.5度
日本酒度 プラス5
酸度  1,8
醪の進み具合も今年はいい感じで
上槽までの日数も予定とおり
成分も例年とほぼ同じに上手く落ち着き
全般的に順調な仕上がりになりました。

仕込み用のタンクと
圧搾機をポンプでつなぎ
ゆっくりと醪が送られます。
搾られたばかりのお酒は
まるっきりの透明ではなく
黄金色を帯びたキラキラ光る液体
といった感じで
水音を立てながら流れ落ち
それはなんとも綺麗なものです。

杜氏さん(社長)とともに
そのまま口に含んで
出来栄えを利いてみるわけですが
まずは
『旨えなぁ♪』
になっちゃううんですねエエエ。
多少は味のチェックの仕方も心得てはいますし
本当は口の中で転がして
甘み・辛み・酸などを確かめるのが
大切なんですが
このときばかりは
口の中にちょっと留まって
スルスルと勝手に流れてしまうんですよ。
危険な旨さ!
仕方ないからもう一口
今度はちゃんと確かめなきゃいけませんね。
搾ったばかりは
炭酸の弾ける感じがかなりの特徴で
そこに気が行きがちですが
その先にある
色んな成分を感じ取りながら
頭の中で整理していきます。

原酒なのでアルコール度は高いですし
荒々しさもありますが
それを感じさせない
綺麗な感じに仕上がっています。
旨みもしっかりありますし
特徴の酸味も出ていますから
喉越しも爽やか~で
バランスよく仕上がりました。

仕込みに関しては
杜氏さんにお任せですし
仕上がりも毎年安定していますから
安心してこの日を待つことが出来ますけど
実際に出来上がりを口にすると
「あぁ、今年も無事に出来て良かった」
と  ホッとする瞬間でもあり
杜氏さんはじめとした
蔵の皆さんに感謝の気持ちで一杯になります。

搾りのときは
今でこそ大分慣れてきましたが
(それでもドキドキ感は毎年同じですね)
初めての年は
数日前からもう落ち着かなくて
かなりテンションあがっていました。(笑)
初めて口に含んだときは
なにがなんだか
嬉しいやら  感動するやら
色んな感情がごちゃまぜになったようで
素直に 単純に
しみじみ旨いなぁ と かみしめるようでした。
実際に出来上がりを体感すると
想像していたよりずっと素敵なことで
思い切ってやってみて
ホント 良かった
半ば興奮状態に近かったもんです。

あんまり感情論に流されちゃいけませんが
やっぱり出来上がるまでの
1から10まで全てに係わるというか
手を掛けるというか
そういうものがあるというのは
ちょっと幸せな事なのかな  と
そのとき思いましたし
それは未だに変わっていません。
だからといって
これが全て・これが最高
なんて事は思っていません。
口に入るものは難しいもので
味の好みは十人十色。
その人の口に合うか合わないか
好みに合うか合わないかで
評価も様々に分かれます。
たくさんのお酒がある中で
「こういうお酒もあるんだ」

飲んでからどういうお酒か知ってもらうのも
どういうお酒か知ってから飲んでもらうのも
きっかけはともあれ
少しでも気に入ってくれるお客さんが増えれば
ありがたいと思います。

搾りの作業が全て終わっても
瓶詰めやらなにやらで
店頭に並べるのはまだ数日先になります。

3月の声を聞いて
少し春めいてくると
フレッシュな新酒をキリッと冷やして
なんてのもいいですよね。
新酒販売の用意が出来たら
またお知らせしますので
興味のある方はぜひ!